☆持続的な食料生産にはなぜ、慣行農業でなく、有機農業なのか

 慣行農法も現在の人間社会を支えるもののひとつですし、また物事の存在には必ず理由や必然性があるものですから、慣行農法の全てを否定するつもりはありません。
 ただ持続的食料生産という、短期的な利便性でなく将来を見すえた視点で農業を見たとき、有機農業の方に将来性を強く感じます。

 持続的な食料生産とは、「地球という視点から見て」効率の良いエネルギーでいかに同じ量の食料を得る事ができるか、と思います。人間が短期的に安い経済的コストで食料を得る事ができても、それが人類を支えてくれる地球の生命力を大きく損ない、限りある資源を効率悪く消費して食料生産するのであれば、持続的な食料生産とはいえないのではないでしょうか。

 ここでは慣行農業とは、農薬・化学肥料を使用し、大型機械・施設の利用を前提とする農業を指します。
 有機農業とは、農薬・化学肥料は全く使用せず、機械・施設も必要最小限にとどめ、なるべく自然の力を利用する農業を指します。

1.慣行農業が持続的な食料生産でないと思う理由
(1)慣行農業の石油依存
 慣行農業は、その大きな部分に石油に頼っていますから、石油資源が有限である以上、持続的な食料生産とはいえません。慣行農業は、以下の通り石油を多用します。現在は石油が安いコストで手に入るので、野菜も安く生産できるように見えますが、石油が少なくなって価格が高騰すればこの農法では、かえって生産コストが高くなり、石油がなくなれば機械や施設は、全く役に立たなくなります。
・農業機械はガソリンや軽油を消費します。
・農業機械の生産・流通・廃棄・リサイクルの為にも石油やエネルギーを消費します。
・農薬や化学肥料の生産・流通、農場での散布にも石油を消費します。
・大型施設の部材の作成、施設の建設、維持管理、廃棄、リサイクルに石油を消費します。

(2)人口の増加を慣行農業の存続理由にはできない
 慣行農業は量に限界のある石油依存を前提にしている以上、いずれ限界が来ることは自明です。石油エネルギーに依存する食料生産で人口が膨らんで、石油がなくなったらとたんに食料生産が激減して、膨らみきった人口をほとんど養えなくなる、という事では悲劇そのものです。石油のある内に、石油資源をなるべく使わず、(使用しても効率よく、少量のみ使う)農法を捜すのは、ごく自然な事といえましょう。

(3)慣行農業は土の力を衰えさせます。
 農薬は、益虫やミミズも、土を豊かにする土中微生物も、害虫と言われるものと一緒に、農地の生命を大量に奪います。結果、食料生産の基礎となる土のバランスが崩れ、栄養が損なわれます。そこで、化学肥料を投入して栄養をおぎないますが、自然が長い時間かけて作りあげてきた土にはなりません。かえって更にバランスを崩したりする事もあります。
 長い時間で見ると、だんだん土は力を失い、慣行農業でできた作物は栄養・味共に悪くなります。また、地力のない土地では、作物を作るのに、ますます農薬や化学肥料が必要になり、地力の低下との悪循環を続けます。
また、大型機械の踏圧でも土が固くなり、機械が大型であればある程、使用によって農地の生命が減少し、地力が衰えます。

(4)農薬・化学肥料の慢性的な毒性による生命力の低下
 農薬や化学肥料は土・空気・水に残留し、生命に対して毒性があります。その毒性は長く残り、地球上の多くの生命を損ない続けます。毒性が消えるまで、長く時間がかかります。また短期間にゼロにしようとすれば、手間とエネルギーがかかります。
 人間は、多くの生命のネットワークの細かい網目に支えられて生きるものであり、薬剤で大量に生命を損なうことは、ネットワークの網目の穴を大きく広げる事であり、生態系のバランスを大きく崩して、人間を支える生命の基盤を自ら破壊することにほかなりません。

2.有機農業や自然農が持続的な食料生産である思う理由
(1)石油資源への依存度が低い
 有機農業は、無限の日光と豊かな生態系の力を、人間の智恵と観察力によって有効に利用する農業であり、石油・電力エネルギーの利用は必要最小限にとどめています。大きな地球の視点から見たエネルギーや資源の利用効率は慣行農業に比較して、格段に高いといえます。
 人間一人あたりの労働生産性は慣行農業に比較して低いように見えますが、収穫された農産物の味・栄養の高さなどを考慮すると、一概にそうともいいきれません。

(2)土の力を維持・増進し、長い目で見て効率が良い。
 有機農業は、農地の生命を殺す事が、慣行農業に比較して少ないといえます。その結果、農地の生命の種類・量・バランスとも慣行農業より良くなり、豊かな農地としての生態系が築かれ、地力が維持されます。このことも、長い目で見ると効率が良い農業という事になります。
 有機農業は、土・水・空気を汚染しないので、生命の力による地力の維持を得られます。生態系が豊かだと地力は肥えてゆき、同じ土で養える人口が多くなります。
 また、薬剤汚染がない事で、環境ホルモン・ダイオイシン・農薬の直接吸引等によって人間や他の生命の生きる力を落とす事がありません。

(3)その土地で養える人口が基本
 土地に無理を強い、資源を急激に消費する農法で一時的に人口を増やしても、長い期間を維持する事はできず、悲劇的な状況で人口を減らす課程を経験せねばなりません。それよりも、その土地土地の地力で養える人口を最大限として、それを自然な農法で維持できるように、少しずつ、今のうちから移行すると良いと思います。まだ資源もあり、地力も残っている今だから、移行する苦労も比較的小さいといえます。
 その土地で養える人口という考え方には、なるべく狭い地域での農産物の流通も前提となっています。食料の流通が広がると、運搬のエネルギーを無駄に使用する事になる他、長期の運送や生態系の異なる国への移送により、ポストハーベスト(収穫後の農薬散布)の原因になり、更に汚染や資源の無駄を広げます。
 人道的な食料支援は否定しませんが、常にその国の農業における自立や、飢餓地域の地力の増進も同時に向上するような支援である必要があります。そうでないと、農薬や大型機械を使用して、土地に無理をかけて生産する生産地も、飢餓地域の農地も地力が衰える一方です。

(4)最も効率的で、究極の持続的農業は自然農
 自然農は、生命の力を最大限に引き出す農法です。また耕さず、草や虫を敵としない農法です。むしろ、草や虫など、自然全体の力を借りる農法といえます。
 農薬・化学肥料・大型機械は全く使用せず、人力機械かごく小型の機械を少量使うのみです。そこに生きる人間や家畜、虫、鳥などの生命の自然な営みからもたらされる草・排泄物・亡きがらを最大限利用する事で、外部からの過剰な肥料をなるべく持ち込まない農法です。自然農へ移行したり、自然農である程度の生産量をあげるまでは、時間がかかりますが、地力が付いてくると、究極の持続的・効率的農法となります。
 現在、各地域で、地域と携わる方の個性を存分に生かしながら、柔軟な方法で自然農の実践が急速に広まりつつあります。
 農場に住む多くの生命達と太陽と水と空気の中に人間が入り、人間の観察力と智恵と直感をまず大きく働かし、体力も気持ち良い程度に使って、その土地から必要なだけの量の食料を頂く農法が、効率的・持続的農業だと私は考えます。
 自然農については、以下のHPを参考にしてください。
自然農のPage
http://www.6348.co.jp/sizen/

私のページも見て頂ければ幸いです。
自然と調和する街づくり・農業
http://yuki.ideas.co.jp/

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